ただ抱かれていた日々──セフレとの一年間

今回は、chiさんからいただいた体験談をご紹介します。
恋愛ではなく、ただ身体を重ねる関係。セフレ。
でも、その曖昧な距離感の中で揺れ動いた彼女の心の軌跡を、丁寧に綴ってもらいました。


彼と初めて身体を重ねたのは、あの日の夜だった。
職場の取引先、飲み会の席で隣に座った彼は、何度も私を笑わせてくれた。
軽く絡むうちに連絡先を交換し、気づけば週末に「会おう」とだけメッセージが届くようになった。

恋人でもない。好きでもない。
でも、彼と過ごす時間はなぜか心地よかった。
ひとりでいる夜の寂しさを、少しだけ忘れられるから。

彼の部屋のドアを開けると、いつもふわりと漂う香り。
照明は薄暗くて、ベッドの上で交わすキスは熱く、舌が絡まるたびに身体の芯が熱を帯びた。
触れ合う指先は優しく、でも確かに私の奥に届いて、甘く、苦しく、そして切なかった。

「好きじゃない」って何度も自分に言い聞かせた。
彼の腕の中にいるときだけ、女でいられた。
仕事や人間関係で張り詰めていた私の心が、ゆっくりほどけていくのがわかった。

終わったあとの彼の背中に手を這わせながら、私は「これでいいのだ」と思った。
恋なんて面倒。私はただ、誰かに触れてほしかっただけ。

セフレ | 体験談

だけど、週に一度、二度のそんな時間は、いつしか心の支えになった。
「今夜はどう?」と彼からのLINEが来ると、無意識に笑みがこぼれる。
けれど同時に、他の女性と笑い合う彼の姿を想像して胸がざわつく自分にも気づいた。

割り切れているはずだったのに、そう簡単にはいかなかった。

彼が女性と歩いているのを偶然見てしまった。
胸の奥がぎゅっと締めつけられて、手の震えが止まらなかった。
「私じゃない誰か」と一緒にいる彼の笑顔が、私を刺した。

それからは会うたびに、心の距離を測るのが苦しくなった。
彼の指が触れても、心は素直に応えなかった。
彼に触れられるのに、心はどこか遠くへ行ってしまった。

「これ、いつまで続けるの?」
ふいに漏らした言葉に、彼はヘラヘラ笑って「わかんない」とだけ答えた。

そんな曖昧な関係に疲れていく自分を感じていた。
恋人でもなく、ただのセフレでもなくなっていく。

終わりは、突然だった。
彼がある日、「付き合うことになった」と言った。
それは私にとって、終わりの合図だった。

私にはそれ以上の気持ちがなかったし、彼を独り占めする自信もなかった。
だから、「じゃあ、さようなら」とだけ伝えて、彼の部屋を出た。

帰り道、涙が止まらなかった。
恋じゃないのに、こんなに苦しいなんて。

でも確かに、あの一年間は私の一部だった。
孤独な夜を埋めてくれた、温かくて曖昧なぬくもりだった。

今思えば、「セフレっていたほうがいいの?」と聞かれたら、こう答えたい。

「いなくても生きていけるけど、いたことで救われた夜は確かにあった」

そして、あのとき抱かれていた感触を、私は忘れないと思う。


(chiさんの体験談はここで終わりです)


ご覧いただきありがとうございました。

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